教職を目指す君たちへのメッセージ

 

元校長 佐藤 俊晴 

 

1.はじめに

 今私は東北福祉大学の聴講生として宗教について学んでいる。もともと仏教について関心があり、仏教について自分なりに学んだりもしていたが、大学で学びたい理由は別にあった。

 一つは日本の教育に名を残している教師には,そのバックボーンにきちんとした宗教を持っている方が多い事であり,二つ目は宗教心を教育の場でどのように育てる事ができるかの研究のためである。

私はすでに教職を退いているが、もっと早くこのことに気付き、真剣に学んでいたなら、もう少しましな教師として職をまっとうできたのではないかと思っている。

東北福祉大学には教職を目指している学生が多いということを聞き、宗教を学べる環境にいる皆さんに、是非教職で頑張っていただきたく、応援のメッセージを送りたいと思います。

 

2.大学にいる間に学んで欲しいこと

1)       教職につくという志を立てる

2)       人の話を十分に聞き取る力と、自分の意見を的確に述べる力を養う

3)       コミュニケーション能力と他と協力し合える態度を養う

4)       教育実習は、自分が教職を目指すに値するかを確認する絶好の機会。子どもと直接かかわることにより、志が明確になることが多い。

5)       教職につくためには、まず教員採用試験の一次合格を目指さなければならない。

過去3〜5年間の問題をインターネットなどで取り寄せ、どんな勉強すればよいか把握し、早めに傾向と対策を講じる。(3年から始める)

 

3.採用にかかわる事

1)採用は県教育委員会で決定し、採用者は各市町に割り振られ、各市町教育事務所,教育委員会で所属学校を決定する。

  2)本採用にならない場合,講師として任用されることが可能であるので,各市町教育事務所に任用願いを出しておくとよい。

3)講師には,6.6講師,初任研後補充講師、産休・育休代替講師,などがある。講師をしながら次年度又採用試験を受けることになる。書類の一部に校長の推薦に替えることができるものもあり,勤務校での実践のありかたがとても重要である。

 

4.教員,講師として赴任する場合の心構え 

1)       採用されたからプロになったのではない。プロとしてのスタートをきったのである。ここから教師の専門性を作り上げるための研修が始まる。

2)       教師である限り学び続けなければならない。それは、学ぶもののみ教えることができるからである。学ぶ場はたくさんある。意外に,子どもたちから学ぶこともあり,すべてのことから学び取ろうとする感性を鋭く磨くことが大切である。

3)       学校は子どもたちのためにあるのであって,教師の雇用のためにあるのではない。

地域があれば,子どもたちが生活し,子どもたちのために学校が建設される。学校があれば教師が必要となり、地方公務員として税金で教師が配置される。教師には常に子ども,保護者,地域の信託に応えることが望まれる。

 

5.学校組織と教育活動

1)学校は組織体であるから,個人的な教育活動には制限がある。その指針となるのは,年度末に作成される学校全体の教育活動を網羅的に示す教育計画である。

2)    教育活動を計画的,効果的に行うため、職員会議,学年部会,教科部会等があるが

これは単に連絡調整ということだけでなく,研修の場でもある。

3)授業は教師の命と言われるが,その基になるのは年間指導計画である。これは毎年計画に基づいて授業を行い,その反省を朱筆で書き残し,次年度に活かすように工夫されている。

4)各学校では,学校教育目標や学校経営方針が年度の初めに示されるが,担任はこれに基づき学級経営案を作成し提出しなければならない。さらに学期毎に指導結果の反省を書き提出することになる。

5)授業の計画には週案があり,1週間ごとの授業計画や反省を記録し提出する。

 

6.教師の職能成長と研修

  子どもに発達課題があるように,教師にも職業的な成長発達課題があると思う。最近課題教員の問題がクローズアップされているが,これは経験年数に応じた発達段階ごとの課題をクリアしてこない教師がこうなったのではないかと思っている。たとえば,20代では何を考え何を学ばなければならないか,30代は何を身につけなければならないかなど,それぞれの段階に,教師として学習したり経験したりして自分のものとすべき,つまり教師という職業人になるために身に付けなければならない課題や内容があるはずである。その大切な発達課題をクリアしてこなかったためにそのような教師に育ってきたのではないかと考えている。

  教師にはさまざまなタイプの者がみられるが,経験の浅い教師のタイプとして次のようなタイプがよく見られる。

  1)子どもたちに完全に弱点をにぎられ,いつも喧騒な雰囲気の中でなんとか授業らしきものを行っている教師。

2)   教師仲間になかなか溶け込めない教師。

3)   誤字を平気で板書したり,時には間違ったことに気付かないで教えている教師。

4)   問題行動児に対する指導を,自分だけで何とかやろうとしている教師。そのため,

かえって手に負えなくなるほどの重症にしてしまう教師。

5)   スカート姿でプール指導をしたり,ハイヒール姿で校庭での指導をするなど,指導

にふさわしくない服装を平気でしている教師。

こういう教師に指導された子どもたちこそいい迷惑で,保護者から担任の当たり外れの声が出る原因ともなるのである。このようなタイプの教師にならないためにも,初任時代から計画的に自己研修や校外研修などでさまざまな内容を学習したり,普段の指導を振り返って足りないとか失敗したと思われる事柄の補足や修正に努めたり,先輩から貪欲に学び取ったりして,教師としての自己の幅と奥行を広げていくことが大切である。

7.教師の生涯研修としての学習内容

 20代

   【発達課題】

     さまざまの分野の実践に体当たりで取り組み,子どもに対する理解の仕方や指導技術を磨くとともに,専門分野でも実践と研究を積み重ねる。

   【学習内容】

     教育課程の理解,学校運営機構の理解,学級経営や生徒指導の基礎的理解,学習指導におけるノウハウの体験,勤務の仕方の理解,保護者への接し方の理解。

   【その他】

     同僚とのコミュニケーションを図るとともに,先輩教師からいろいろなことを積極的に学び,人間として教師として成長していくことに心がける。

 30代

   【発達課題】

     広い視野にたって教育を考えるとともに,今までの教育実践を教育の本質に照らし合わせて整理し,実証的に究明しながら多面的な解決策をもつ。

     また,さまざまな分野の概要を知悉することに努め,それらについて企画,運営することができる。

   【学習内容】

     教育課程,教育内容,教育方法,教科教育法,教科経営などについて一層の理解,生徒指導や学級経営の一層の充実強化,さまざまな教育領域の理解,教育研究の会得と実践,初歩的な教育法規の理解,教育思潮の初歩的理解。

   【その他】

     中堅教員としての意識をもち,広く同僚と話し合えるとともに,互いに支えあう人間関係の醸成につとめる。また,先輩に学び後輩を指導するという行為を通して先輩と後輩を結ぶ橋渡し的存在になるようにする。

 40代

   【発達課題】

     今までの実践研究や体験に新たな教育構想を組み込み,実践研究を一層深め,自己としての教育理論を確立する。

     また,教育全般(特に教育課程,学校・学年経営,指導方法など)に対する構想を考え,それを具体化する手順を工夫し実現を図る。

   【学習内容】

     教育課程の編成や実施および評価についての理解,学校運営の初歩的理解,学校評価を含む教育評価の理解,学習指導法や生徒指導の原理および問題解決策の理解,職務や各種教育領域運営の理解,社会教育の理解,教育法規の理解,教育思潮の把握。

   【その他】

     実質的には管理職に属するという認識をもつことが大切。後輩を指導し鍛えるとともに,広く先輩や教育関係者からいろいろと学び取るように努める。

     また,自己を高めるための教養を身につける努力が必要。大きく視野を広げることが大切で,柔軟かつ創造的に事象を考えたり見たりすることができるようにする。

     さらに,職場内に望ましい人間関係が醸成されるよう,積極的にコミュニケーションを図っていく。

50代

  【発達課題】

    自分なりに確立した教育理論や経営理論を基に,学校の管理・運営にあたるとともに,学習指導,学年・学級経営,生徒指導等の一層の充実改善と強化を図り,個性的な学校経営を行う。

  【学習内容】

    確かな教育観や経営観の樹立と実践のための文献研究,個性的な学校経営を目指す教育課程の編成・実施・評価,学校の管理・運営にかかわる一切の法規についての精通,内外における教育事情や教育思潮の理解,教養を深める努力。

  【その他】

    経営層としての識見や力量を寄り一層深みのあるものにするとともに,個に即して後輩を指導したり,大先輩やその他の教育関係者と積極的にコンタクトし,指導・助言・忠告等を快く受ける。また,父母や地域の人々との交流を図りながら学校教育についての理解を浸透させていくようにする。