西暦2000年は、Y2K問題で不安な新年を迎えた。Y2K問題とは、コンピューターの誤動作に関するもので、コンピューター管理されている核爆弾を積んだミサイルが新年とともに発射されるのではないか。多くの人の不安をよそに何事もなく経過してゆき、閏年というもう一つの懸念もクリアされた初夏に、ニュースが世界を駆け抜けた。
 それは、人間の全遺伝情報(ゲノム)を解読する国際プロジェクト「ヒトゲノム計画」について、クリントン米大統領が26日、ホワイトハウスで記者会見し、「概要の読み取り完了」を宣言した。会見には、読み取りを進めた官民の研究者が招かれたほか、イギリスのブレア首相も衛星中継で参加。両首脳と研究者らは、研究の成果を正しく生かすことが重要だと強調した。
 ここで言う「ゲノム」とは、実体として見るなら細胞の核内にあるDNAのすべてをさす。私たちのからだをつくっているひとつひとつの細胞の中にあるDNAはまったく同じでそれがゲノムだ。一方、機能としてみるなら、ゲノムとは、一つの生物をその生物たらしめる遺伝情報の総体のことである。すなわち、生物が己のからだを作り上げ、まちがいなく働かせ、子孫をつくり、寿命を全うするのに必要な遺伝情報のすべていう。これを種としてみれば、ヒトゲノム、イネゲノム、ハエゲノムとなり、個体としてみれば、私のゲノム、あなたのゲノムとなる。
 そんなものに興味ないと言う人も、このゲノムのことは昨今のニュースで耳にしていることだろうし、各種報道にDNAや遺伝子という言葉が、最近頻繁に出ていることは誰しも認めることであろう。「ゲノム」の正確な定義は、生命活動を行う上で必要な全ての遺伝子を持った1組の染色体のことであり人間は2セットの染色体を持っているので2ゲノムあることになる。DNAが、生物学の主役になったのは20世紀後半。地球上の生物はすべて遺伝子DNAの指令によって生活していることがわかり、1953年にその二重らせん構造が明らかになってからのことだ。
ゲノム